13.2 IPアドレッシング
Linux Essentials Online Text | 2021/08/03

IPアドレスはネットワーク通信に必須となるファクターです。そのため、ネットワーク通信したい機器には必ずIPアドレスを割り当てなければなりません。しかしながら、どんな数字でも割り当てて良い、というわけではありません。

IPアドレスの割り当ては、いくつかのルールに従って行います。例えば、前述した通りネットワークにはLANとWANの2種類があり、それぞれに割り当てられることが出来るIPアドレスが決まっています。WANネットワーク上で割り当てることができるIPアドレスを「グローバルIPアドレス」と呼び、LANネットワーク内で使用することができるIPアドレスを「プライベートIPアドレス」と呼びます。

グローバルIPアドレス

インターネット(WAN)上で利用可能なIPアドレスを「グローバルIPアドレス」と呼びます。一部特殊なアドレスも含まれますが、一般には、後述する「プライベートIPアドレス」以外のアドレスが「グローバルIPアドレス」であると考えていて差し支えありません。

「グローバルIPアドレス」はIANA(Internet Assigned Numbers Authority:現在はICANNと呼ばれる)を頂点とした階層的な委譲関係によって世界的な管理が行われています。「グローバルIPアドレス」は、まずIANAが各地域のRIRにIPアドレスを分割して割り当て、各地域のRIRが割り当てられたIPアドレス範囲を各NIRに割り当てを行い、更にNIRがそれぞれのISPや企業、学術機関に割り当てを行うことで管理されています。

通常、私達がインターネットに接続する場合は、インターネットサービスプロバイダ(ISP)と契約し、グローバルIPアドレスを割り当ててもらわなければなりませんが、このIPアドレスは「IANA」が管理している全体のIPアドレスのうち、アジア・パシフィック地域での使用が許可されたIPアドレスが「APNIC(Asia Pacific Network Information Center)」に移譲され、その中の日本で使用してよいIPアドレスが「JPNIC(Japan Network Information Center)」に移譲され、さらには皆さんが使用するプロバイダに渡されます。
私たちはこのように委譲されてきたIPアドレスを、プロバイダと契約することで使用することができます。

プライベートIPアドレス

「プライベートIPアドレス」とはLANで使用する専用のIPアドレスのことです。プライベートIPアドレスは、RFC(インターネット技術の仕様書)によって次のアドレス空間が予約されています。

クラスアドレス範囲台数用途
A10.0.0.0~10.255.255.255約1,677万台大規模NW用
B172.16.0.0~172.31.255.25565,534台中規模NW用
C192.168.0.0~192.168.255.255254台小規模NW用

以前解説したアドレスクラスに似ていますが、ちょっと違います。混同しないように気をつけて下さい。

上記のアドレス範囲は文頭にも記載したとおり「LANで使用する専用のIPアドレス」です。インターネットで利用する事はできませんが、この範囲内であれば自分で作ったネットワーク上で自由に使用して構いません。クラスA~クラスCまであり、使用可能なアドレスの範囲(割り当てる事が可能なIPアドレスの数)が異なるので、ネットワークの規模に応じて使い分けます。

サブネットマスクとCIDR

IPアドレス設計を行う際、ネットワークに接続できるコンピュータの台数に応じて、ネットワークのクラスが決めますがクラスA、B、Cそれぞれに利用できるホスト数の差が大きいことに気がつくでしょうか。

例えば300台のコンピュータを接続したい組織は、クラスCでは小さいため、クラスBを使うことになりますが、クラスBでは大きすぎるのです。これはリソースの無駄であり、特にグローバル環境下では限り有るリソースの浪費に繋がります。

そのため、「サブネットマスク」を用いることでネットワークにつなげられるアドレス範囲を制限してネットワークセグメントを設定する方法が作られました。このように、クラスを使わずに「サブネットマスク」を用いてアドレス範囲を割り出す割当方法を「CIDR (Classless InterDomain Routing)」といいます。

「CIDR (Classless InterDomain Routing)」によって、区切られたアドレス範囲の中でホスト部が最小値となるアドレスを「ネットワークアドレス」、ホスト部が最大値となるアドレスを「ブロードキャストアドレス」といい、この間にあるIPアドレスが実際に機器に割り当てて使用する事が可能なIPアドレスであり、つまりスコープと呼びます。

IPアドレスの割り当て

ネットワークの通信にはIPアドレスが重要です。しかし、日常生活でIPアドレスを意識することはありません。
ネットワークには、DHCPと呼ばれる、IPアドレスを自動的に割り当ててくれる仕組みがあり、この恩恵を受けているためです。

例えば、皆さんが普段使用しているスマホ、外で使用する場合は、基地局の無線とつながっていて、契約しているキャリアからグローバルIPアドレスをもらってインターネットを行います。家に帰ってくると、家の中にあるWiFiに切り替わります。この時、スマホには家の中に設置したルータからプライベートIPアドレスをもらって、通信できるようになります。いずれもDHCP機能のおかげです。このようにDHCP機能は、日常の様々なところで使われています。

DHCP機能は、家庭内LANや中小企業などの小規模LANでは、ルータと呼ばれる機器がその機能を持っていてそれを使用しているケースが一般的です。大企業や大学の学内LANなどの大規模LANでは、専用のDHCPサーバが設置されることが多いです。

なお、DHCPはIPアドレスを割り当てますが、「譲渡」ではなく「貸し出し」です。貸し出しているだけなので、期日が来たら返さなければなりません。WindowsでIPアドレス情報を調べると、リース期間という情報が出てきます。これがDHCPサーバに貸し出されたIPアドレスを返す日時です。リース期間は、設定によって異なります。数時間の場合もありますし、数日の場合もあります。

ただ、実際にこの日時にIPアドレスを変換する、というケースはありません。

通常は、リース期間の半分の時間が経過すると、延長要求を行われます。基本的にこの要求は、受理されますので、その機器がネットワークで稼働している間は同じIPアドレスが使用される、ということになります。

なお、その機器がネットワークから居なくなる場合は、リース期間に関係なくIPアドレスは返却されます。

特別なIPアドレス

IPアドレスの中には、特別な役割を持ったIPアドレスがあります。特別な役割を持っているため、通常、ネットワーク機器に設定して使用することができません。

ループバックアドレス

TCP/IPが利用できるインターフェースに必ず設定されるIPアドレスで、自分自身を示します。ループバックアドレスとしては、「127.0.0.1~127.255.255.254」の範囲内であれば、どれを使ってもよいとしていますが、ループバックアドレスは複数使用されることはほとんどなく、通常は「127.0.0.1」が使用されます。

ネットワークアドレス

ネットワークそのものを示すIPアドレスで、ネットワーク機器に設定して使用することはできません。

ネットワークアドレスは、IPアドレスにおいて、ホスト部のビットがすべて「0」であるものを指します。つまり、設定されたIPアドレス範囲内において、もっとも小さな値のことです。

例えば、「192.168.0.0/24」はネットワークアドレスです。ネットマスクが「/24」の場合、「192.168.0」がネットワーク部で、第4オクテット(4つ目の数字)がホスト部です。この場合は、ホスト部のビット、つまり最後の8桁が全部「0」です。2進数で8桁がすべて「0」ですから、10進数に変換しても「0」です。

「192.168.0.0/24」は、IPアドレスの範囲が「192.168.0.0~192.168.0.255」であることを示します。「192.168.0.0」はネットワークアドレスで使用できませんから、「192.168.0.1」から割り当てて使用します。

ブロードキャストアドレス

ブロードキャストすることができる特別なIPアドレスです。ブロードキャストとは、ネットワークに接続されたすべてのホストにメッセージを送信する通信方法のことを言います。つまり、設定されたIPアドレス範囲内すべてに一斉通信することができます。ネットワークアドレスと同様、ネットワーク機器に設定して使用することはできません。

ブロードキャストアドレスは、IPアドレスにおいて、ホスト部のビットがすべて「1」であるものを指します。つまり、設定されたIPアドレス範囲内において、もっとも大きな値のことです。

例えば、「192.168.0.0/24」というネットワークアドレスがある場合、ネットマスクが「/24」ですから「192.168.0」がネットワーク部で、第4オクテット(4つ目の数字)がホスト部です。この場合は、ホスト部のビット、つまり最後の8桁が全部「1」になるのがブロードキャストアドレスです。2進数で8桁がすべて「1」になるため、10進数に変換すると「255」です。つまり、「192.168.0.0/24」というネットワークのブロードキャストは「192.168.0.255」ということです。

「192.168.0.0/24」は、IPアドレスの範囲が「192.168.0.0~192.168.0.255」であることを示します。「192.168.0.0」はネットワークアドレス、「192.168.0.255」はブロードキャストアドレスであるため、ネットワーク機器に設定することができません。したがって、使用できるIPアドレスの範囲は、「192.168.0.1~192.168.0.254」の254台、ということになります。

マルチキャストアドレス

マルチキャスト通信を行うための特別なIPアドレスです。マルチキャストとは、決められた特定の複数ネットワークと通信を行う通信方法のことを言います。マルチキャスト通信にはクラスD「224.0.0.0~239.255.255.255」を使用します。

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