4.1 コンピュータを構成する要素
Linux Essentials Online Text | 2021/07/14

コンピュータの選定

今までに、コンピュータの選定をしたことがありますか?
コンピュータの選定には様々なシチュエーションがあります。プライベートで言えば、自分や家族、友人のパソコンを購入する時、新しいスマホを選ぶ時もそうです。ビジネスシーンでは、入社した後輩のパソコンを手配する時や、案件で使用するサーバ等の機器選定をする時などが思い浮かぶと思います。

単純に動けば良い、ということなら安いものを購入すればよいですが、やりたいことが増えていくと性能不足によって出来ないことがでてきたり、動きが遅くてストレスが溜まったりします。逆に高性能なものを選んでしまい、無駄な買い物をしてしまうこともあります。これがプライベートであれば「自分が悪かった」で済みますが、ビジネスシーンの場合、被害を被るのは顧客となりますから、ハードウェアを選ぶにあたっては、利用する用途や要件に応じて十分に吟味した上でハードウェアを選定する必要があります。そのためにもコンピュータが動作するための構成要素について基礎知識を知っておくことは非常に重要と言えます。特に、仮想化技術においては機器選定において、ハードウェアに関する知識が大いに必要となります。

では、どのような機器を選べばよいでしょうか。

筆者が友人等から選定方法を聞かれた場合は、「CPU」「メモリ」「HDD/SDD」の3つの要素を基準に選ぶように伝えます。この3つの要素を人に例えると、以下のような役割になります。

◆CPU:
データを処理する機能です。
高性能であればあるだけ、処理性能が上がります。

◆メモリ:
容量が大きければ大きいほど、多くの作業を中断して置いておくことができます。

◆HDD/SSD:
容量が大きければ大きいほど、多くのデータを保存できます。

上記はパソコンだけでなく、スマホ等でも同じことが言えます。
この3要素は性能を確認する上で必要な要素であるとともに、動作に必要な要素であるとも言えます。

CPU

Central Processing Unitの略称で、訳すと「中央演算処理装置」です。コンピュータの中心に位置し、各装置からのデータを受け取って処理を行い、適切な装置へ送り出すのが仕事です。

ちなみに、CPUは「コンピュータの頭脳」と表現されますが、実際の役割は単純な四則演算と論理演算(0と1を用いた演算)しかしていません。

とはいえ、コンピュータの性能はCPUの処理の速さで決まります。具体的には次の3つの要素によって決まります。

クロック周波数

コンピュータの処理はものすごくシンプルで「OFF(0)」か「ON(1)」しかありません。このONとOFFの切り替えスピードが速ければ速いほど同じ時間で処理できる情報量が増えて性能が上がります。つまりCPUのクロック周波数とは、このONとOFFの切り替えスピードのことを指します。

クロック数の単位は「Hz」(ヘルツ)です。これは1秒間に何回振動したかを示す単位で、CPUでは1秒間に何回ONとOFFの切り替えが出来たかを示しているとイメージしてもらえば良いと思います。

例えば、2Hzだと1秒間の間にONとOFFを2回繰り返します。つまり1秒間に2回処理ができる、ということです。これが10Hzだと1秒間に10回処理できるという意味です。

マルチコア

「コア」とは、厳密にはCPUの中心部分であり実際の処理を担っている場所の事を指します。マルチコアは、1つのCPUパッケージの中に、複数のCPUコアを搭載させたもののことを指します。

原則としてCPUは、1CPUコアあたり1タスクの処理しかできません。そのため、CPUコアが1つしかない場合に複数のタスクが流れてくると、片方のタスクは順番待ちになります。

この時、CPUコアが複数あれば、コアの個数分タスクを並列処理することができるため、作業効率が向上し結果として処理が速くなります。そのため、クロック周波数があまり高くないCPUコアをマルチコアにすることで、周波数の高いシングルコアよりも効率的な作業を行わせることもできます。

マルチコアはCPUコアの数によって呼び方が変わります。例えばCPUコアが2つだと「デュアルコア」、4つで「クアッドコア」、6つで「ヘキサコア」、8つで「オクタコア」と呼びます。技術上はコア数が多いほど高性能となります。

マルチスレッド

スレッドとは作業単位のことです。CPUは1つにつき1スレッドの処理を行います。通常1コアであれば1スレッドの処理となります。しかし、場合によってはリソースの半分くらいしか出していません。そこで、この眠っているリソース部分にもう一つのスレッドを流し込んで処理させることで1つのCPUコアに対して、2つのスレッド処理をさせる技術のことをマルチスレッドと言います。

マルチスレッドでは、1コアでも命令の系統が2つになります。そのためマルチスレッドに対応したCPUはOSやソフトウェアからは1コアにつき2コアとして認識されます。マルチスレッド技術はメーカーによって呼び方が異なり、Intel社では「Hyper-Threading」、AMD社では「Simultaneous Multithreading」と呼びます。

マルチスレッドは、性能が倍増するわけではありませんが、実際の物理コア数よりも多いコア数として処理することができるため、主に仮想化サーバ環境で使用されます。マルチスレッド機能を使うことでスレッド合計数分まで仮想CPUの最大数を増やすことができます。

メモリ(RAM)

コンピュータは入力装置を用いて命令を実行し、CPUが処理を行うことで動作します。命令は一度メモリ内に展開されてからCPUに送られ、処理した結果がメモリに格納されます。この時、演算処理によっては処理が一度で終わらずに継続する場合があります。このような場合、最初に処理した結果をメモリに一時的に保存しておき、次の処理をするときに必要になった段階でメモリから取り出して使用します。このように一時的に保存しておく場合にも、その際にもメモリが使用されます。

このような、CPUとの橋渡しをする際に使用するメモリを、RAM(Read Only Memory)と呼びます。RAMはデータを保存しておくことが出来ないため、電源を切るとメモリ内のデータが消えてしまいますが、その分高速に読み書きすることができます。

厳密に言うとRAMにはいくつかの種類があり、主記憶装置としてのメモリ以外に、CPUに搭載されているメモリもあります。CPUに搭載されているメモリは1次~3次キャッシュと呼ばれ、CPUに近い場所に置かれています。このキャッシュメモリは、CPUの近くにあるほど高速に読み書きが出来ますが、その分容量が小さくなります。
前述で、メモリを机の上と表現しましたが、メモリを作業台とするならキャッシュメモリはその人の暗記力や、簡易メモ帳といえます。

HDD/SSD

HDD(Hard Disk Drive)

HDD(Hard Disk Drive)はパソコンのデータを保存する装置です。コンピュータでは補助記憶を担当します。パソコン以外でもネットワークディスク、サーバ、家電のHDDレコーダ、ゲーム機などで使われています。CPUが頭脳、メモリが机の上とするならば、HDDは本棚・引き出しといえます。処理した内容を記録し、後でまた引き出すために保存します。

HDDの中身は左の写真のようになっています。上半分にある丸い円盤を「プラッタ」といいます。このプラッタがアルミやガラス等硬い素材で作られたことから「ハードディスク」と呼ばれます。真ん中からディスクに伸びている針のようなものがあり、この先から磁気を出してディスクにデータを書き込みます。この針とディスクとは僅かな隙間しか無いため、少し揺れるだけで針がプラッタにふれてしまいます。なお、ディスクに傷が付くとその部分はデータの読み書きができなくなります。これが、HDDが落下や衝撃により故障しやすい所以です。

HDDには3.5インチ(デスクトップ用)、2.5インチ(ノート用)、1.8インチ(小型モバイル用)の3種類のサイズがあります。

接続方法にはIDE、SCSI、SATA(シリアルATA)などがありますが、IDE、SCSIは古い規格で現在はほとんど使われておらず、現在はSATAが主流です。また、HDDには「回転数」という性能指標があります。通常は7200rpmと5000rpmの2タイプがあり、回転数が速いほど読み書きの速度が上がりますが、反面、駆動音が大きくなり発熱も上がります。

なお、容量を示す単位は、KB(キロバイト)<MB(メガバイト)<GB(ギガバイト)<TB(テラバイト)です。1KBは1024Bです。データの世界では1024毎に単位が上がります。つまり、1024KBで1MB、1024MBで1GBとなります。ちなみに1Bは8bitです。1bitは2進数で表記されるコンピュータで扱う最小単位です。

SSD(Solid State Drive)

SSDは(Solid State Drive)の略で、HDDと異なり半導体素子メモリを使った記憶媒体です。「ソリッドステート」とは個体状態を示す言葉ですが、固体状の物質内部で起こる電子現象を利用した素子や回路、装置のことをソリッドステートと言い、半導体と同義として使われます。いわばソリッドステートを利用したドライブ、ということです。USBメモリやSDカードなどにも同じ技術が使われています。シリコンを使った集積回路をメモリとして使用することから「シリコンディスク」とも言います。

HDDと違い、電子回路の中のデータに直接アクセスするためデータの読み出し、書き込みが高速です。また、ディスクを回す機構が無いため、その分故障しづらく、音も静かです。

近年、SSDの容量が大きくなり、容量単価が下がってきたこともあり、急速に普及しつつありますが、HDDと比較すると価格は高価です。

HDDとSSDの違い

 HDDSSD
対障害性衝撃に弱く、壊れやすい衝撃に強く壊れにくい
作動音書き込み、読み出し時に音がする作動音が無い
読書速度ディスクから読み出すため遅いHDDと比較して速い
サイズ、重さディスクのサイズよりも小さく出来ず、重い軽くて小さい
容量大容量HDDと比べると小さい
容量単価安価高価

HDDは機械駆動式であるため動作したときに作動音があり、デメリットになりえますが、大抵の場合、劣化してくるとプラッタとヘッドがぶつかる様な音がして壊れる予兆を確認することができます。

一方、音が静かで壊れにくいSSDはHDDと比較してよく見えがちですが、SSDには寿命が存在します。SSDに用いられているデータを記録する最小単位をセルと呼びますが、このセルは徐々に劣化します。一般的な「NANDフラッシュメモリ」の場合、セルはおよそ1千~1万回程度の書き込みと消去で寿命に達するといわれています。

HDDの場合は、プラッタさえ無事であればデータを救出できる可能性がありますが、SSDの場合、セルの寿命が来るとそのセルへのアクセスができなくなるため、データの救出は困難です。

マザーボード

コンピュータの中核となる基盤です。先程紹介したCPUやメモリ、HDD/SSDだけでなく、光学ドライブやLAN、USBポートなど様々なデバイスが接続されます。

マザーボードには電源ユニットも接続し、各ハードウェアに対して電源供給も行います。電源ユニットはACPIに対応している必要があります。ACPIとは、Advanced Configuration and Power Interfaceの略で、コンピュータの電源管理やハードウェアの構成管理を行うための標準規格の一つです。オペレーティングシステム(OS)側から高度な電源制御を行うことができます。

また、マザーボードにはBIOS(またはUEFI)と呼ばれるプログラムが組み込まれており、このプログラムを使い、接続された各ハードウェアの認識や有効無効、ブートシーケンスの設定などを行います。

ブートシーケンスとは起動順序のことです。コンピュータは電源が投入されると、コンピュータ自身に接続されている各ハードウェアの認識を行い、次にOSを探して起動しますが、このOSを探す場所の優先順位を決めることができます。

通常OSはHDDの中に格納されていますが、ライブCD/DVDを起動する場合のOSはCD/DVD-ROMに格納されています。USBブートと言ってUSBメモリや外付けHDDの中にあるOSを起動したり、ネットワークブートと言ってネットワーク上にあるOSを起動する方法もあります。このようにOSはHDD以外から起動するケースがあるため、ブートシーケンスでそれらの場所をHDDよりも優先させる必要があります。

光学ドライブ

光学ドライブとは、ディスクに記録された情報の読み出しにレーザー等を使用する装置のことです。一般的にCDドライブ、DVDドライブ、BDドライブを指し、CD/DVD-ROM等に保存されたデータを読み出したり、CD/DVD-R等に書き込みを行うために使用します。

以前はCD/DVD-ROMでOSやソフトウェアを配布することが主流でしたが、インターネットの発展によりダウンロードすることが多くなり、光学ドライブが搭載されていなくてもあまり困ることがなくなりました。

内蔵で搭載する場合、HDDやSSDと同様にSATA接続で使用するものが主流ですが、ノートパソコンなどのように増設するためのスペースがない場合はUSBで接続します。

また、LinuxOSにおけるCD/DVDの閲覧はちょっと特殊で、後述する「マウント」という操作を行わないと中のデータにアクセスすることができません。

拡張スロットを使用したデバイス

デスクトップやサーバでは、拡張スロットを使ってハードウェアを増設し、足りない機能を補うことができます。
マザーボードには写真のように予め拡張用のスロットが用意されています。

拡張用スロットはいくつかの種類がありますが、それぞれ決められた規格でできた基盤を差し込むことで動作します。

なお、スロットの数はマザーボードによって異なります。拡張性が高いほど物理的なスペースを必要とするため筐体は大きくなります。

拡張スロットを使用する場合は、コンピュータの筐体を一度開ける必要があります。そのため、OSを停止した状態で作業を行わなければなりません。このような拡張スロットを用いて増設できるデバイスとしては、ビデオカード(グラフィックボード)、ネットワークインターフェースカード、RAIDカードなどがあります。

USB

周辺機器を規格の一つです。SATA接続を行うドライブ類やPCIスロットを使う拡張デバイスは、増設のために一度電源を切らなければなりませんでしたが、USBはホットプラグに対応しているためOSを起動したまま接続したり取り外したりすることができます。
また、プラグアンドプレイにも対応しているため、OSが対応していれば、USB機器を接続するだけで自動的に認識して使用できるようになります。

USBデバイスには、キーボードやマウス、光学ドライブや外付け記憶媒体(HDDやUSBメモリ等)などがあります。

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