3.2 オープンソースビジネス
Linux Essentials Online Text | 2021/07/14

オープンソースの価値

数年前まで、オープンソースによるビジネスモデルは、多くの投資家にとって決して魅力ある分野ではありませんでした。当時、Redhatが成功を収めていましたが他に続くオープンソース企業がなかったことで、Redhatは奇跡的な例外とされていたためです。

しかし2018年、Redhatは2014年の時価総額の3倍に相当する320億ドルでIBMに買収されます。その他にもMuleSoftは65億ドルで買収、MongoDBも40億ドルの市場価値があると言われています。近年のオープンソースの隆盛には、インターネットの発展やデジタルモバイル機器の普及など、環境も大きく関連しますが、いずれにしてもオープンソースソフトウェアによるビジネスシーンは、着実に成長しつつあります。

様々な収益モデル

オープンソースソフトウェアによるビジネスにはいくつかの収益モデルがあります。

テクニカルサービス

FLOSSは無償である代わりに無保証であるため、ユーザは自身で勉強して対応するか、専門家に任せるしかありません。テクニカルサービスは、「自己解決能力が十分でない」または「解決に迅速に対処したい」ユーザに対してサポートやトレーニング、コンサルティングなどの専門サービスを提供します。

Redhat社や、SUSE社、カノニカル社(Ubuntu)は、それぞれが提供しているディストリビューションに対してサポートサービスを提供しています。

カスタマイズ

既存のオープンソースソフトウェアを用いたシステムをそのまま導入するのではなく、カスタマイズ等を行って提供するサービスです。WordPressや、XOOPS等に代表されるCMSのようなカスタマイズ前提のソフトウェアを、利用者が要望を伝え、専門家が構築していきます。

独自FLOSS開発

新しいソフトウェアを開発し、FLOSSとして公開しながらビジネスに繋げていきます。これには、いくつかのパターンがあります。基本的に無料で提供し、追加機能に応じて有償化するサブスクリプションパターン、最新版を有償提供し、古くなったバージョンをオープンソースとして無償提供するパターンなどがあります。

クラウドサービス

クラウドサービスとは、システムに必要なリソース(機器などのハードウェアやソフトウェア)をインターネット上で提供するサービスのことを指します。逆に、システムを使用者自身が管理している施設内に、機器を設置、構築、運用する環境のことをオンプレミスと言います。

クラウドサービスには、サービス提供範囲によって3種類のサービスがあります。

SaaS(Software as a Service)
クラウド上に設置したソフトウェアをインターネット経由で提供するサービス。GoogleのG Suite、Microsoft365などが該当します。多くはサブスクリプション型の収益モデルです。

● PaaS(Platform as a Service)
アプリケーションの実行に必要な環境を提供するサービス。通常、ソフトウェア開発を行うには開発ツールをインストールしたサーバを用意し、ネットワーク設定が必要ですが、PaaSを使えば、これらの手間を省くことが出来ます。AWS(Amazon Web Service)やGoogle cloud Platformなどが該当します。

● IaaS/HaaS(Infrastructure as a Service/Hardware as a Service)
インフラに必要なサーバやネットワークなどのハードウェアをインターネット経由で利用するサービスです。必要なリソースを必要な分だけ使用でき、不要になればすぐに手放すことができるメリットがあります。
Amazon EC2(Amazon Elastic Compute Cloud)やMicrosoft Azure、GCP(Google Compute Engine)などが該当します。

ユーザは、利用するサービス範囲に応じてどのクラウドサービスを使うか決めます。いずれのケースも、ユーザの希望に応じてリソースを切り売りするサブスクリプション型がメインです。

クラウドサービスがビジネスの主流になったわけ

クラウドの代表的な技術は「仮想化」です。
仮想化技術は最初オンプレミス(システムを使用者が管理している施設の構内に機器を設置して運用すること)環境で使用されていましたが、大規模なシステムを用意することが前提であり、イニシャルコストが高額になってしまうため、用意できるユーザが限られていました。

そのため、インターネット上にFLOSSを組み合わせたシステムをクラウド(複数のシステムを1つの大きなシステムとして動作させる技術)を使って大きな仮想環境を作成し、アプリケーションや、基盤を切り売りするサービスが生まれました。これが、先に紹介したクラウドサービスです。

従来、システムを構築するためには数年後の未来を予測して設計を行わなければならず、これに対応した機器を用意したり、用意した機器を設計、構築、運用するために各種エンジニアを確保するために多額の予算が必要で、システム規模が大きくなればなるほど、導入できる組織が限られていました。

しかし、クラウドの登場により、スモールスタートすることが可能となり、規模に応じてシステムを拡大すれば良くなりました。もちろん、ある程度の設計や構築は必要ですが、都度、局所的でよくなりました。また、物理的なメンテナンスも不要となり、サーバやネットワーク機器を置く場所も、運用エンジニアを確保も必要最低限でよくなりました。

つまり、システム導入にかかるコストが激減したのです。これにより、大企業のような多額の予算を持っていなくても、プロジェクトの規模に合わせて運用することが可能となり、クラウドサービスが使われるようになっていったのです。

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